最高人民法院の「典型事例」

【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第181回)

 中国の最高人民法院(最高裁判所)は、2024年6月26日に「最高人民法院が発布する虚偽財務を打撃する典型事例(最高法発布打撃財務造假典型案例)」を公布しました。中国では、裁判結果が他の事例の法解釈に影響を与えず、あくまでその事例での処理例を示すに過ぎません。しかし、中国の裁判所はときどき「このような事例にはこのような判断をするべき」という事例を集めた「典型事例」を公開します。典型事例であっても、必ずまた同じ判断がなされる保障はありませんが、ある程度は押さえておく必要があると思われます。
 そんな典型事例ですが、財務関係の事例が公表されたことから、中国当局は最近経済犯罪の取り締まりを強化しているものと思われます。
 この公表された典型事例の一つは以下のとおりです。
 A社が融資を集める目的で架空の会社を創設し、B会計事務所がその架空会社の経理を担当していることになっていました。結果として、A社は、投資家に与えた損失の補償の義務を負い、B会計事務所も損失の5~10%の範囲で連帯賠償責任を負うとしました。

●高橋孝治(たかはし・こうじ)アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。