宮崎市マンションラッシュで初の「億ション」も分譲中

2025年12月に完成予定の「レーベン宮崎 ONE TOWER」

 宮崎市街地を中心に分譲マンションの建設ラッシュが続く。その象徴とも言えるのが、タカラレーベンが現在、市街地中心部に建設を進める「レーベン宮崎 ONE TOWER」だ。20階建てで全93戸。最上階は128平方メートルと136平方メートルの2戸で、間取りは3LDK +S(サービスルーム)。販売価格はどちらも約1億2000万円で、市内初の「億ション」とされる。また宮崎県内の新築分譲マンションの中で最高層となる。共用部にはフィットネスジムやガーデンラウンジが付設されており、市内でこれまでなかったハイグレードタイプとなる。
 今はまだ基礎工事の段階で、完成は2026年1月を予定。売れ行きは好調で、4月下旬からの第1期販売では最上階の2戸をはじめ、最安の70平方メートル約3500万円台に至るまでの37戸全てがすでに完売している。残り56戸の販売時期は未定だが、問い合わせは増えているという。同社によると、最上階含め購入したのは、ほとんど地元の個人で、特に60歳以上のシニア層が多いという。県外からセカンドハウス目的で購入したのは全体の1割ほどしかない。また、法人名義や海外からの投資目的といった契約もない。同社の西日本支社・中田隆之九州・四国支店長は「今まで市内になかったタイプの構造を追求した。潜在的需要は高かったのだろう」と分析する。
 市街地では同社のほかに、JR宮崎駅から徒歩4分の距離に住友不動産の「シティテラス宮崎」(全204戸)が今年3月に完成。販売価格は3400万~5200万円台とされ、10月からの入居開始を目前に現在も販売中だ。JR九州も攻勢をかけており、駅周辺に「MJRザ・ガーデン宮崎駅前」(20年完成)と「MJR宮崎駅南パークサイド」(21年完成)のほか、宮崎観光ホテルや宮崎市役所の前を流れる大淀川沿いに「MJR大淀リバーサイド」(全52戸)を今年1月に完成させている。同じく大淀川沿いに、マリモが「ザ・リバーサイドガーデン大淀河畔」(全56戸)を建設する予定で、こちらは来年5月末に完成する見込み。
 なぜ宮崎市街地がマンションラッシュに沸くのか。一つは市郊外のシニア層の間で需要が一定程度見込まれることが挙げられる。地元の不動産業者は「宮崎県はどこも車社会。生活の利便性を求めて郊外から市街地に移住するシニア層が目立つ」と感触を持つ。もう一つは南海トラフ巨大地震への備えが挙げられる。南海トラフ巨大地震が発生した場合、想定される津波の高さは最大16メートルとも言われており、戸建て住宅へのダメージは想像に難くない。そうした危惧からより頑丈で高層な住居を求めて市民が新築マンションを求めるといったケースが多いという。
 とはいえ、マンションを供給すればすぐに買い手が見つかるかは別問題だ。中には完売に至らず、空き部屋が目立つ物件もある。先の不動産業者は「地方都市の所得水準に照準を合わせるだけではなく、購入サイドの需要をいかに深掘りできるかがデベロッパーにとって重要だろう」と話す。