「人口転入超過」も今後の継続にハードル

本庁舎に「祝」の窓文字

 北九州市は、昨年の市内への転入者が転出者を492人上回り、人口が60年ぶりに「転入超過」に転じた。5市合併で北九州市になった1963年から2年間は転入超過となっていたが、65年から転出超過となっていた。市はプラス492人の転入超過を達成したことを記念して、今年1月7日、北九州市役所本庁舎に窓文字で「祝」などと表現し、”歴史的快挙“に喜びを爆発させた。
 大幅に改善したのは、20〜30代の「若者」のほか、0〜14歳までと30代の「子育て世代」。市は、その要因について第2子以降の保育料無償化などをはじめとする手厚い子育て支援や、ITを中心とした企業誘致の成果だとしている。また、外国人の転入超過が1802人、日本人の転出超過が1310人で、日本人の転出超過は、前年から約1000人減少しており、「日本人で大幅改善した」のもポイントだとしている。市は28年に1000人の転入超過を達成する目標を掲げている。
 同市の子育て支援については長い間、全国的にも高い評価を得ている一方で、市内には大学が11校あり、学生数は2万人を超えているものの、北九州市地域の大学卒業者の市内就職率は、毎年2割程度にとどまっているのが、課題の一つだった。
 その点、九州・沖縄各県からの転入超過も904人と増加、首都圏や福岡市への転出超過も改善された。「ビジア小倉」のような最先端ITビルが建設され、企業誘致がかなり順調に進んだことも寄与している。市によれば、過去10年間、IT系に関しては188社が進出したが、そのうち23年度だけで46社が進出。IT系の新規雇用人数は724人と意外と大きい。
 もともと前政権の時から改善の傾向はあった。22年はコロナ禍の入国制限緩和を受け、外国人の転入が大幅に増加したことで48人、23年は206人と、転出超過は続いていたが、社会動態のマイナス幅が年々小さくなっており、「転入超過に転じるのは時間の問題」とみられていた。武内和久市政になり、さまざまな要因が重なり、「社会増」につながったといえる。
 もっとも、この流れが継続できるかどうかだが、ある地元経済人からは「仮にITの企業誘致が後押ししたとなれば、それ以上の成果を残さなければ1年で終わってしまう」という懸念する声も出ている。
 同市は05年に100万人を切り、今年1日現在で90万6941人。少子高齢化により死者数が出生数を上回る自然減は依然として続いており、毎年7000〜8000人が減少している。武内市長も市を「稼げる街」にすることで、人口100万人の復活を何とか実現させたいと常々、口にしている。これを回復させることは容易ではないが、今回の社会増がそのための第一歩となるのか注目される。