上海高級人民法院が「行政審判白書」を発行
2024年11月01日
【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第216回)
『人民法院報』2024年10月29日付1面に「上海市高級人民法院は2023年度行政審判白書を発行した(上海高院発布2023年度行政審判白皮書)」という記事が掲載されました。これによれば上海市高級人民法院が『2023年度行政審判白書(2023年度行政審判白皮書)』を発行したとのことです。白書では、2023年の上海の裁判所は6365件の行政事件を第一審として受理し、6316件を終結させたと述べられています。
分野別にみると、都市建設、公安、人力資源、社会保障、市場監督にかかわる事件が特に多く、これらの項目のみで全体の54.5%(3471件)に達するとのことです。また、区政府や郷鎮政府を被告とする案件が5523件と多く、全体の87%を占めたとのことです。ちなみに郷鎮とは、県級市の末端自治区を指します。
ひと昔前までの中国は、社会主義国家として農民・労働者の権益を守っている中国共産党の指導を受けながら、市民の権利を害する政府機関は存在しないとの建前をとってきました。そのため、これまで中国で行政に対して文句があっても、見ないふりをされていました。今後も、中国の行政に対する不満がちゃんと処理されるのか注目されます。
●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。