五輪期間の「国民の健康増進」発言

【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第193回)

 『人民日報』2024年8月8日付1面に「国民の健康を通じて、国民の健康を増進する(以全民健身助力全民健康)」という記事が掲載されました。これによれば、習近平・総書記は「国民体力は、すべての人民が体力を強化し、健康な生活を送るための基礎であり、保証である」と述べたそうです。一応、8月8日は中国の全国健康の日であるための発言となっていますが、習近平・総書記は「スポーツ強国と健全な中国を建設する最も基本的なことは、国民の体力を強化し、国民の健康を守ることである。これは現代社会主義国家を包括的に建設する上で重要な側面だ」と強調しており、明らかにパリオリンピックを意識した発言と言えるでしょう。
 国家権力側が国民の健康に配慮することは大事なことですが、どうも全体的に国威発揚のための発言のように見えます。このような国威発揚発言をして、パリオリンピックが終わった後の中国のメダル獲得数が予想より少なかった場合、中国は政治的にも荒れる状況になりそうです。

●高橋孝治(たかはし・こうじ)
アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。