那覇市が「鉄軌道」の新案を公表

那覇市が鉄軌道の導入にあたり参考にした宇都宮ライトレール

 那覇市が今年3月に発表した、次世代型路面電車(LRT)導入に向けた整備計画案が注目されている。那覇市のまち中を東西と南北、二つの路線で結び、既存の路線バスやタクシー、モノレールとつなぐことで、第5次那覇市総合計画(2018〜27年)が掲げる「誰もが移動しやすいまち」を実現することが目的。併せて、慢性的な課題となっている交通渋滞の緩和を目指す。ただし、「本素案は関係機関との協議を行うために市の考え方をまとめたもので、決定事項ではない」(市都市計画課)。市は今月31日まで、素案に対するパブリックコメントを実施中。道路管理者である国や県、県警、路線バス事業者など関係機関と協議を行い、26年度中のLRT整備基本計画の策定を目指す。
 市が想定する総事業費は480億円で、270億円は国費を活用する考え。運営方式は、市が軌道や施設を整備し、第三セクターなど民間事業者が運行する「上下分離方式」を採用する方針が示された。また、1日当たりの平均乗客数は全線で2万1900人と予測する。収支については、運輸収入を約11億2000万円、経費を約9億7000万円と見込み、単年度収支は約1億5000万円の黒字と試算している。市は、東西を結ぶルートから先行的に整備を進め、40年度の開業を目指す。
 市がLRTの導入の検討を開始したのは、当時、那覇市長だった故翁長雄志(たけし)氏が04年11月の市長選で2期目の公約として掲げたのがきっかけ。05年9月定例会でも、LRT導入を推進する方針を示した。
 他方、20年越しの軌道系鉄道の敷設計画に否定的な意見があるのも事実。そうした意見に対して市は、国が提唱する「コンパクト・プラス・ネットワーク」のまちづくりが必要とした上で、「世代を問わず誰もが暮らしやすいまちになるために、まち中に入る自動車量を減らしながら公共交通をさらに便利にすることで、『人を中心としたまち』『誰もが移動しやすいまち』をつくる必要がある」と説明する。ちなみに「コンパクト・プラス・ネットワーク」とは、「生活に必要な各種のサービスを維持し、効率的に提供していくため、各種機能を一定のエリアに集約化すること」を指す。
 また、市が示したLRTの敷設予定地は県道が多くを占めており、県の協力なくして事業化することは難しい。市は、県や交通事業者など関係機関との合意形成に3年、着工から開業までに10年を見込む。ただ、LRTが実現するには、合意形成の3年が鍵を握っていることは間違いない。