迫る泡盛の「酒税軽減措置」削減

 「軽減措置の段階的廃止の決定から2年が経過したこともあり、各酒造所は冷静に受け止めている」─。沖縄県酒造組合の新垣真一専務理事は、6月15日の出荷分から適用される新制度についてこう説明する。その制度とは、沖縄復帰特別措置法に基づく泡盛の酒税軽減措置の段階的な削減のこと。現在、アルコール度数30度の泡盛で35%(1.8リットル換算で189円)が軽減されているが、今回と26年、29年の軽減率引き下げを経て、32年5月に完全に廃止される。
 新垣専務理事が言うように、泡盛業界に軽減措置の段階的削減を否定する意見は見当たらない。かと言って積極的に受け入れているわけではなく、「制度として役目を終えたことが示された以上、従うしかない」(県内酒造会社社長)というのが正直な意見のようだ。「酒税の増加分を自社で吸収できない酒造所が大半で、価格に転嫁せざるを得ないのが実情」(別の酒造所社長)と厳しい局面にあることは間違いない上に、円安や原材料費の高騰を要因として、既に値上げを実施している酒造所も多い。さらなる価格値上げが今後、消費者の購買意欲にどう影響するかは不透明という不安がつきまとう。
 県内には泡盛の酒造所が46あるが、軽減措置は前年度の県内出荷量に応じて分類された三つのグループごとにされる。県内出荷量が1300㌔㍑を超えるAグループは3社あり、今回の措置により25%、26年5月に15%、29年5月に5%へと引き下げられる。県内出荷量が200㌔㍑〜1300㌔㍑のBグループは10社あり、それぞれ30%、20%、10%となる。県内出荷量が200㌔㍑未満のCグループは33社で、段階的な軽減措置は講じられず32年5月に軽減率がゼロになる。
 沖縄が本土復帰した1972年に酒税軽減措置が導入された背景には、主に二つの理由があった。①復帰に伴って流通量が増える国内大手メーカーとの競合で地場企業が淘汰される②販売価格が上昇して県民の家計負担が増す─ことだ。創設当初は5年間の時限措置とされたが、期限を迎えるたびに延長された。しかし、17年からは「全国の租税特別措置に合わせる」として延長幅が2年となり、21年5月には1年に短縮された。時限措置でありながら国が延長を認めてきたのは、商品への価格転嫁による県民の家計圧迫の懸念に加えて、製造業が少ない沖縄県では泡盛の製造が貴重な地場産業であるといった点が配慮されたからだった。22年度までの軽減税額は、総額で約497億に達している。