高速新造船「待ったなし」建造費急騰

対馬・壱岐などの自治体にとっても船の更新は重大な関心時に(九州郵船のJF)

離島をつなぐ高速船「ジェットフォイル(JF)」が老朽化し、新船への更新が急務となっているが、全国の運行事業者は更新計画を立てられずにいる。JFは、「海を飛ぶ船」と呼ばれ、水中翼を使って船体を海面から浮上させ、ジェットエンジンを使って進む。
JFの耐用年数は35~40年程度とされているが、現在、1都4県で18隻就航しているうち、17隻が約30年を経過している。更新が進んでいない理由が、コロナ禍の影響と建造費高騰だ。現在運航しているJFの建造費は25億円程度だが、2020年に25年ぶりに新造された東海汽船(東京都)のJFは約50億円に倍増した。これが現在は約70億円まで膨らんでいるという。
 米ボーイング社が開発したJFは、技術を引き継いだ川崎重工業が建造しているが、ラインを維持するためには下請け事業者を含めて、技術を維持していくためのコストがかかり、業界関係者は「更新が長期間に及ぶとそうした関連コストも膨らむため、建造費が巨額になっているのでは」と指摘する。また、コロナ禍で旅客数が激減し、経営難に陥った運航事業者も少なくない。
 長崎県壱岐|対馬と博多を結ぶJFを運航している九州郵船(福岡市)もJF更新は直近の経営課題になっている。同社のJFが就航したのは1991年。壱岐|対馬間は波が高く、それまでの高速船では対応できず、待望の新造船投入だった。現在2隻が就航しているが、「ヴィーナス1」が32年、「ヴィーナス2」が38年経過している。
 JFの新造船の建造期間は2年はかかることから、40年を目前にヴィーナス2の更新は待ったなしの状態だ。ただ、70億円もの建造費を同社が単独で調達し更新することは困難で、国や自治体などの支援は不可欠。ちなみに東海汽船のケースでは東京都が建造費の半分の約25億円を負担した。ただ、これは財政規模がケタ違いの東京都だから可能だったことで、他の自治体では難しいのが実情だ。
 九州郵船では、JR九州高速が所有していた3隻のJF(ビートル)を購入し、「部品取り」に活用して、JFの寿命を少しでも延ばす対策を講じているが、更新は、投資規模が大きいだけに、運航事業者側としても慎重な経営判断が必要で、その対応に苦慮している。