テック生かし宇宙産業ビジネス創出へ

イベントには実業家でロケット開発も手がけているホリエモンこと堀江貴文氏も登場

 世界規模で急速に成長を続けている宇宙産業を盛り上げようと、北九州市で、ことし8月「九州宇宙ビジネスキャラバン」が開催された。同市には小型衛星の運用数が世界1位の九州工業大やモノづくり企業が集積、同4月には市産業経済局内に宇宙専任の組織「宇宙産業推進室」を新設するなど、宇宙産業の振興に取り組んでいる。まずは九州・山口から宇宙産業の機運を盛り上げ、新たなビジネス創出につなげていく考えだ。
 全国から宇宙ビジネスのキープレーヤーを集め、宇宙関連企業と未参入企業の新たな出会いの創出や、 宇宙に関心のある企業や学生が宇宙ビジネス業界の最新動向を把握できるイベントとして、昨年の福岡市に続き開催された「九州宇宙ビジネスキャラバン2024北九州」には、約700人以上(250オンライン含む)が参加登録、約22の企業や大学が出展ブースを展開した。参加者は前回に比べて倍増した。
 宇宙産業は今、参入障壁が下がっているという。九州工業大で開発した超小型衛星をはじめ、人工衛星の小型化が進み、併せて、ロケットも小型化していることで、従来の大企業のみならず、スタートアップも数多く参入しており、世界的にみると年間80億ドルが投資されているという。日本政府は20年に4兆円となっている市場規模を、30年代早期に2倍の8兆円に拡大していくことを目標に掲げており、今後「宇宙戦略基金」として10年間で1兆円の投資を宇宙分野に行う方針だ。
 九州と宇宙産業という点では、鹿児島県に内之浦宇宙空間観測所と種子島宇宙センターの二つの人工衛星の射場を構えていることから、宇宙関連企業が集積しており、宇宙分野に九州から進出する土壌が整っているとされる。また、産学官連携でも九州航空宇宙開発推進協議会(九航協)の活動を通じて、宇宙ビジネスを推進していく体制もある。
 実行委員長を務めた九工大の北村健太郎教授は、今回のイベントのテーマは「衛星データのビジネス利用をどのように盛り上げていくのか」「人材育成、人材供給体制の構築」「宇宙機器開発・製造への新規参入に向けた備え」の三つとしており、これらを共有して、「九州・山口から宇宙産業を盛り上げていくべき」と力を込める。
 北九州市は、前述のように九工大の超小型衛星を中心に、宇宙産業の裾野を広げようとしている。実際に、衛星開発や衛星データ活用を行う学術機関を始め、部品製造やデータ活用に強みを持つ、モノづくり企業やIT企業が集積するなど、将来的に衛星の企画・設計から製造までを一気通貫で取り組むポテンシャルがある。また、運用する小型・超小型衛星数が7年連続世界1位という九工大の存在や、理工系14校、3000人の理系人材を輩出している豊富な理工系人材も強みだ。また、銀河鉄道999をはじめとする宇宙を舞台にした作品を生み出した漫画家・松本零士の出身地であり、かつてテーマパークのスペースワールドの存在など「市民カルチャー」としても浸透しているのも優位性となっている。
 これまで同市では宇宙ビジネスにチャレンジする仲間づくりのため「北九州宇宙ビジネスネットワーク」(会員数64団体、今年8月時点)を組織、勉強会やセミナー、マッチングの場を創出することに努めてきた。また、昨年には「北九州市宇宙ビジネスセミナー」(約120人参加)、今春は「大規模スタートアップイベントWORK AND ROLE宇宙トークセション」(約700人参加)を開催し、宇宙飛行士の毛利衛氏、野口聡一氏を招いて、トークセッションを行った。
 一方、技術開発支援として、「衛星データ・宇宙機器」への技術開発補助金を設け、市内大学・企業などを対象に、最大500万円を補助、昨年度は4件が採択された。今年度からは新たにロケット、人工衛星の「宇宙機器」の技術開発補助金も新設され、5件が採択されている。武内市長は「リアルスペースワールドを実現するため、宇宙関連企業の技術や人材を蓄積し、サプライチェーンを構築、人工衛星を飛ばすだけでなく、教育や旅行、保険など幅広く裾野を開拓し、30年代には市内の宇宙関連ビジネス1000億円を目指していく」と意気込んでいる。