習総書記が党「基層幹部」に不満

【寄稿】高橋孝治の中国「深層(真相)」拾い読み(第184回)

 『人民日報』2024年7月9日付10面に「基層幹部がもっと大衆に奉仕できるようにする(譲基層干部更多下沉服務群衆)」という記事が掲載されました。これによれば、習近平・総書記は「一部の基層幹部は各種書類の作成や残業によって、村の家庭に行って調査をする時間すらない」と指摘した上で「複数の任務が基層に関する任務を妨害することや、形式主義、官僚主義に陥ることを防がなければならない」と述べたとのことです。
 習近平・総書記の発言にある「基層幹部」とは、党の末端幹部のことです。彼らは、地域の家庭状況などを確認して、社会に不満を持っている人がいないか、その不満を党として解消できないかを調べたりするものなのですが、そのチェックができておらず、人民のための共産党にならなくなっていると習近平・総書記は指摘しているのです。
 今の時代は、外国人も多く中国に居住し、中国共産党が保護の対象としない人も多くいます。そのため、実際に党が市民の実情確認をどれくらい行っているのか現実には不明確な部分もありますが、このような問題が中国では発生しているということです。人民の不満を丁寧にすくい上げないと共産党の意義が失われるため、基層幹部の残業量などはこれから調整が入るでしょう。

●高橋孝治(たかはし・こうじ)アジアビジネス連携協議会・実践アジア社長塾講師/大明法律事務所顧問。中国・北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)。専門は中国法、台湾法。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。現在は、立教大学アジア地域研究所特任研究員、韓国・檀国大学校日本研究所海外研究諮問委員も務める。