気になる小倉総合車両センター“跡地利用”

小倉総合車両センター

 九州旅客鉄道(JR九州)は7月、「小倉総合車両センター」(福岡県北九州市)を解体し、JR貨物が保有する東小倉駅(貨物駅)の用地を今年度末までに取得した上で、現小倉総合車両センターの機能を移転すると発表した。投資額は約480億円で、2031年度末の竣工を計画している。小倉総合車両センターは1891年(明治24年)に九州鉄道(当時)の工場として発足し、1907年には国有化されるなど約130年の歴史があり、経年に伴う施設や設備の老朽化が課題だった。新車両基地は持続可能な車両検査の実現を目指した環境配慮型の車両基地を建設し、「コンパクト化」「効率的な車両検査」「地球環境への貢献」を目指すとしている。
 今回の移転発表によってにわかに浮上しているのが、小倉総合車両センターの“跡地利用”だ。小倉総合車両センターは約14ヘクタールの広大な土地を有し、JR小倉駅から約2・5キロメートルと都心に比較的近く、北九州都市高速道路に隣接するなど北九州市内屈指の用地になることが予想される。その背景にあるのは、各地の鉄道会社も自社やJR貨物が所有する土地を有効活用する事例が近年増えているためだ。JR東日本エリアでは20年3月に開業した「JR高輪ゲートウェイ駅」は品川車両基地跡地約9・5ヘクタール)の再開発事業が進んでおり、JR西日本エリアでは梅田北ヤード(旧国鉄梅田貨物駅、約24ヘクタール)を「うめきた」エリアとして2期工事が進行中で、それぞれ新駅やオフィスビル、公園、複合商業施設の建設が進められている。
 JR九州でも実績がある。JR千早駅周辺はもともとJR貨物の「香椎操車場」だった場所で、2000年に操車場跡地を「香椎副都心土地区画整理事業」として再開発事業が開始された。03年にはJR千早駅が開業し、現在ではNTTドコモ九州香椎ビルなどの高層ビルやマンションや香椎副都心公共施設(通称:なみきスクエア)が建設されるなど、福岡市東エリアの拠点エリアとして大きく生まれ変わった。
 過去の事例を見る限り、今回の小倉総合車両センター跡地も新駅やオフィスビルなどの再開発事業を進めていくことが想定されることから、”市内の貴重な一等地”の行方が注目されている。