【事業売却】名門フェニックスC・Cがアコーディア系に!?/シーガイアの米投資ファンドへの「再売却」に地元は衝撃走る

 宮崎市の大型リゾート施設「シーガイア」の米ファンドへの再売却は地元経済界でも衝撃を持って受け止められた。その一方で米投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」の買収の大きな狙いは、九州の名門ゴルフ場「フェニックスカントリークラブ(フェニックスC・C)ではないか」と地元経済人は見ている。

カジュアルゴルフ路線拡大 近年では名門コース傘下に

国内屈指の名門コース「フェニックスカントリークラブ」

 フェニックス・シーガイア・リゾート内にあるフェニックスC・Cは、日本のトップ3に名を連ねることもあり、1974年以来「ダンロップフェニックストーナメント」の舞台にもなっている日本屈指の名門ゴルフコースで、海外を含めたゴルファーのラウンドしたいコースの常に全国上位になっている。
 買収したフォートレス・インベストメント・グループ(フォートレス社)といえば、昨年に、セブン&アイ・ホールディングス(HD)が売却を進めていた百貨店子会社そごう・西武の買い手として注目を集めたが、2021年にはゴルフ場チェーン最大手の「アコーディア・ゴルフ」を買収している。同社は、1998年に設立され、2007年にニューヨーク証券取引所に上場、米国初の上場代替投資運用会社となったが、17年にソフトバンクグループ(SBG)の子会社となった。ただ、買収後も経営はSBGから独立して行われていた。日本では、12年に「マイステイズ・ホテル・マネジメント」(マイステイズ)を取得以降、日本最大級のホテル運営会社に成長させた一方、これまで159のホテルを取得(契約中を含む)。昨年SBGは株式の9割をアブダビ首長国の政府系ファンドに売却している。
 一方、アコーディア・ゴルフは03年のブランド創設以来、年齢や性別に関係なく誰もが気軽に楽しめるカジュアル路線を前面にゴルフ場運営をM&Aで全国に拡大。現在、1都1道2府32県に172のゴルフ場と26の練習場を運営(いずれも今年3月末時点)し、運営施設数では国内第1位。カジュアル路線のゴルフ場としては、「パシフィックゴルフマネージメント」(PGM)との2強となっている。
そんなアコーディアも近年は傘下の名門ゴルフ場で国際トーナメントを開催している。17年から成田ゴルフ倶楽部で世界的なゴルファーが参加する米国PGAツアーチャンピオンズ、19年からアコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブで米国PGAツアートーナメント「ZOZO CHAMPIONSHIP」を開催するなど、「従来のカジュアル感だけではない、高級路線へと手を伸ばしている」(ゴルフ関係者)といわれており、今回のシーガイアを運営するフェニックスリゾート(フェニックス社)についても、その対象として絶好のチャンスとみたのは想像するに難くない。

行政主導で再建模索も失敗 起死回生IR誘致も見送り

 シーガイアは1988年、総合保養地域整備法(リゾート法)の第1号指定を受けた「宮崎・日南海岸リゾート構想」の中核施設として1994年に全面開業。当初、行政主導型の観光振興策として多方面から注目を浴びたものの開業当初から厳しい経営が続いた。その要因は、当初は600億円程度を見込んでいた投資額が、最終的には2600億円超となったことだった。99年3月期決算では累積赤字が1115億円を突破し、同年6月には協調融資団の幹事行だった第一勧銀(現みずほ銀行)が撤退し、事実上の新規融資の道が断たれた。救済に動いたのは、松形祐堯宮崎県知事(当時)で、基金を設立するなどして支援に動いたが、結局、2001年に第三セクターとしては当時、最大規模となる3260億円余りの負債を抱えて会社更生法の適用を申請した。
 シーガイア再生に手を挙げた大半の企業が外資系で、その中から米投資ファンドのリップルウッドホールディングスが162億円で買収した。当初は外資系の運営に県民の不安は高まったが、着々と再生し、07年には開業以来初めて営業黒字となった。これを12年に、当時IR(統合型リゾート)参入に関心を寄せていたセガサミーホールディングス(HD)が4億円で買収し、約100億円を投資した。
 同社は13年に韓国でカジノを含むIR施設「パラダイスシティ」の運営を始めたが、宮崎県は国内IR候補地に手を挙げることはなく、セガサミーHDは、横浜市のIR計画に参加を表明したが、横浜市が計画を撤回してしまった。パラダイスシティは集客を増やしつつあるが、肝心の日本でのIRの動きは停滞している。
 14年には世界最大級の室内プール「オーシャンドーム」が解体され、その跡地は宮崎県によって「アミノバイタルトレーニングセンター宮崎」(県屋外型トレーニングセンター)となり、昨年から運用されている。22年度、23年度と二期連続で黒字転換したとされている。元々シーガイアはフェニックスC・Cと、隣接するトムワトソンゴルフコース、高層ホテルの「シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート」(当時はオーシャン45、1994年開業)だけなら「利益が出せる施設」といわれており、両ゴルフ場はシーガイアの大きな収益源となっていた。
 今回、セガサミーとしても「次なる成長に向けて」ということで売却に踏み切ったわけだが、「今が円安であり、売り時と判断したのだろう」(ある地元経済人)との見方になっている。ただ、同社は売却後に議決権ベースで20%の株式を再取得することになっており「これは歴史あるダンロップフェニックストーナメントを今後も継続的に開催していくためでは」(別の地元経済人)とみられている。
 今回の事業売却で6月1日付けで、フォートレス社傘下でマイステイズ会長の山本俊祐氏が非常勤の新社長に就任。前社長の片桐孝一氏が、代表権のない副社長となった。フェニックスカントリークラブはプレー料金は3万円台で、コロナ禍後も好調に集客している。当面の運営も現状のままでなされることで、今後はアコーディアゴルフの高級ゴルフ場として利用されていく可能性が高いとみられている。
(鳥海 和史)